森 秀人:釣りの科学―新しい釣魚学入門 ブルーバックス 468



●レビュー内容(本書「釣魚学とはなにか」より)

この本では、いくつかの、例外的な釣魚も紹介しているが、それはあくまでも例外であって、本旨は、魚を釣るうえに必要な科学的知識の探究におかれている。深海魚とか、ヤツメウナギとか、興味ある魚類は多いが、あくまでも「釣りの科学」に徹して、とりあげる魚類は、釣りの対象魚にしぼっている。これを契機に、日本の釣魚学がさかんになることをわたしは願っている。


●目 次

Ⅰ 釣り人の科学 / Ⅱ 釣り道具の科学 / Ⅲ 釣り場の科学 / Ⅳ 釣り餌の科学 / 釣魚の生理学 / Ⅵ 魚はどうして餌を食べるか


●読書のポイント

大型連休中にこの本を読みました。10年ほど前はこの時期の休日はほとんど欠かさず渓流づりに出かけていましたが、いまではさっぱりご無沙汰です。釣りをやったことのない方にとっては、釣りに関する本を手にすることはまずないでしょう。私自身、岐阜の郡上八幡というところで渓流釣りを嗜むようになるまでは、全く釣りの本とは無縁でした。ところが、釣りをして数々の失敗や経験、あるいは感動を味わう中で、釣りの奥の深さをつりの本を通して再確認するという作業がこの上もなく楽しいことになりました。

さて、私の釣り談義はこれくらいしにして、この本についてご紹介しましょう。
本書はそのタイトルのとおり、「釣り」という趣味を「科学」という観点からまとめたとてもユニークな本です。釣り人の行動心理から釣り道具、釣り場、餌、そして魚の生理学にいたるまで、釣りを趣味にする人にとっては興味のある話が科学的にまとめられていて参考になる本です。もちろん、この本を読んだからといってすぐに釣りの腕前が上がるわけではありませんが・・・。釣りという行為をさまざまな角度でしかも一つの科学としてとらえようという試みがとても参考になるのです。これを読むと釣りの奥深さを改めて確認することができます。

こうしたアプローチの仕方が、環境問題やエコロジーを考える上でも成り立つのではないかというのが、この本を紹介しようと思ったきっかけです。釣りをする人にとっては、釣果が最大の関心事であることは異論がありません。でも、その釣果による達成感や満足感を確実に得るためには、人間の行動や道具、釣り場、餌、そして魚の行動などあらゆる情報を自分自身のなかで消化する必要があると思うのです。同じことは環境についてもいえるのではなどと考えながら読み進みました。自分にとっての環境学をこんな本を参考に作ってみたいと思いました。