日垣 隆:知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る 大和書房
- 作者: 日垣隆
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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●レビュー内容(「BOOK」データベースより)
この本であなたの知的生産力は100倍になる。すぐに使える21世紀版知的生産の技術。
●目 次
序章 知的ストレッチとは / 第1章 読む―ストレッチ読書術 / 第2章 構える―ストレッチ書斎術 / 第3章 考える―ストレッチ検証術 / 第4章 創る―ストレッチ仕事術 / 第5章 書く―ストレッチ文章術 / 第6章 疑う―ストレッチ回避術 / 第7章 決める―ストレッチ決断術
●読書のポイント
この本は、環境問題を取り扱った本ではありません。知的生産術(具体的には執筆活動)の提案本です。ただ、この本の6章に環境問題について著書の辛辣な見解が載っていたのでここで紹介することにしました。
以下、本書からの引用です。
危機を煽る人々
かつて私は、ダイオキシンの問題を取り上げたことがあります。このとき最初に出版社から出されたオファーは要するにダイオキシンの危険を書いてくれというものでした。しかし、世間で言われていることを検証していくうちに、「これは違うのではないか」と思うようになりました。
(中略)
ダイオキシンに関してはメリットと思えるものは何一つない。それが明らかだったから、市民団体や環境派の人々にとっては、完璧な悪玉として槍玉にあげやすかった。そうならば、完全な悪玉だから、徹底的に退治すればいいという飛躍までは「あと一息」です。その結果、日本全国みな大型焼却炉にしてしまったという経緯があるのでした。
確かに、ダイオキシン問題というのは、環境行政とプラントメーカーの思惑が一致した出来レースとしいう見方をするととても合点がいくシナリオに見えてきますね。本当のところはどうなのかわかりませんが、ウクライナ共和国のユシチェンコ大統領が大量のダイオキシンを毒に盛られても死亡しなかったことは記憶に新しいとことです。どの程度の毒性が人体にあるのか正直まだ分かっていないことも多いようです。
マスコミにとって、世の中に警鐘を鳴らすことが使命だというテーゼで動いていますが、これが行き過ぎるとどんな局面でも「とりあえず危ないと言っておけ」ということになりかねない、と著者は指摘しています。危険を煽っておけば、どっちに転んでもマスコミは責任を問われることにならない。これがマスコミの思考回路(思考停止)の実態だと・・・
もうひとつ本書で指摘しいているポイントを紹介しましょう。
予防原則というリスク
リスクを評価するときには、狭い分野だけで考えるのではなく、様々なジャンルのことを総合して考える必要があります。学問の世界では化学は化学、医学は医学と分けて考えられていますが、現実では化学も医学も含めたところで、総合的にリスクについて考えなければ意味がありません。それに、行政に協力してリスクを評価する人というのは、だいたい工学系か物理系の人で、法律家の人はまず含まれていません。りすく・コミュニケーションについて考えている人は、犯罪のリスクについてはほとんど考えていない・・・
(中略)
ダイオキシンのような化学物質の場合には、リスクがあるという理由から総て排除する、ということで世論が一斉に動いた時期がありました。なぜ犯罪に関しては、予防拘禁などとんでもないと言いながら、化学物質に関しては大切だと言い切れるのか。・・・
とても考えさせられる問題だと思います。確かに、環境問題について、極端なまで厳密に追求するという姿勢がいまの世の中強すぎるように感じます。白か黒かをはっきりすることは確かに一面では重要ですが、一方でそれが国民にとって有益になっているのか、検証してみる必要があることも確かなのでは?
この本を読んで、もっと様々な専門家が集まって議論すべきだという思いを強くしました。