小宮山 宏:地球持続の技術 岩波新書

地球持続の技術 (岩波新書)

地球持続の技術 (岩波新書)



●レビュー内容内容(「BOOK」データベースより)

地球温暖化、化石資源の枯渇、廃棄物の大量発生―破局が待つ地球の近未来に対して、技術には何ができるのか。四分の一のガソリンで走る自動車や五倍の効率のエアコン、太陽電池の可能性などを検討し、2050年までにエネルギー効率三倍増、自然エネルギー二倍増をめざすビジョンを提出。地球を持続させる完全循環型社会への道を示す。


●目 次

第1章 地球は持続できるか / 第2章 エネルギーを知る / 第3章 省エネルギーはどこまで可能か / 第4章 「日々のくらし」の省エネ技術 / 第5章 「ものづくり」とリサイクル / 第6章 自然エネルギーの導入 / 第7章 地球を持続させるために / 第8章 技術は社会とどう向き合うか


●読書のポイント

地球環境問題やエネルギーの問題を取り扱った新書が数多く出版されています。その中でもわかりやすさと簡潔さ、そして基本的な論理構成に一本筋が通っているという点で、本書は他の追従を許さない内容の優れものです。

本書では、現実的に達成可能な技術革新の積み上げから2050年に持続可能な社会を達成する「ビジョン2050」プロジェクトが提唱されています。この「ビジョン2050」は、具体的な数字目標が掲げられており、今後のあるべき環境対策について論理的なシナリオが示されています。たとえば、二酸化炭素の排出を減らすため、2050年には「いまに比べエネルギー効率を3倍、自然エネルギーを2倍にすべき」という具合です。

エネルギー効率を3倍に上げることは、それほど簡単なことではありませんが、こうした具体的な数値目標が掲げられると、その達成に向けて技術革新が起きることも期待できます。

とにかく、一般読者にもわかりやすく、しかも論理矛盾を起こすことなく理論的限界を見据えて、追求すべき技術課題を的確に示している点は流石です。長期的ビジョンに立ったものごとの考え方や方向性の示し方などが見事に示されており、科学技術者が読んでも得るものは大きいと思います。