中谷 宇吉郎 :雪 岩波新書 R (4)

雪 (岩波新書 R (4))

雪 (岩波新書 R (4))



●レビュー(出版社/著者からの内容紹介)

天然雪の研究から出発し,やがて世界に先駆けて人工雪の実験に成功して雪の結晶の生成条件を明らかにするまでを懇切に語る.その語り口には,科学の研究とはどんなものかを知って欲しいという「雪博士」中谷の熱い想いがみなぎっている.岩波新書創刊いらいのロングセラーを岩波文庫の一冊としておとどけする. (解説 樋口敬二)


●読書のポイント

学生時代に買った古い新書が手元にあったので、久しぶりに読み返してみました。雪と社会のかかわりからはじまり、雪の分類、そして人工的に雪をつくる話など、科学の読み物としてとても興味深く読み進めることができる本です。

この本は戦前に書かれたもので、私が持っている(いた)本は岩波新書の戦後版です。カッコつきで(いた)と過去形にしたのは、先週の広島出張の際に飛行機の中に忘れてきてしまい、今は手元にないのです(涙)。このロングセラーは今は岩波文庫として読むことができるので、改めて1冊購入したいと思います。

さて、雪の結晶なんていうと、一見私たちの日常生活とはまったく縁のない話のように思われがちです。でもさにあらず。雪のさまざまな結晶の分類について懇切丁寧、またわかりやすくまとめられている本書を読むと、外部環境のわずかな違いによって、雪の結晶の形が大きく異なって出来上がることが理解できます。環境の変化を示すバロメーターとして雪の結晶を調べることができるのではないかと思えるほどです。本書は昭和の初期に書かれた本です。最近ではかつてのように毎年大雪み見舞われるようなことはなくなりつつあります。この環境の変化を考えると、その頃の雪と今の雪とでかなり違いがあるのではないか、なんて考えながら読みのもいいのではないでしょうか。地球環境のことを考える上でとても参考になる一冊だと思います。