森下 郁子:環境を診断する―五感による生態学 中公新書 614

環境を診断する―五感による生態学 (中公新書 614)

環境を診断する―五感による生態学 (中公新書 614)



●レビュー(著者略歴)

1935年生まれ。奈良女子大学理学部動物学科を卒業後、子育てを経て大学に戻り、アユ博士宮地伝三郎の共同研究に加わる。昭和50年からアマゾン川の生物・水質調査に取り組む。1976年社団法人淡水生物研究所に入り、1984年より同所所長。1980年に、日本の河川の生物学的水質階級地図完成。国土交通省環境省などの水環境問題の審議会専門委員も務める。「川の健康診断」「環境を診断する 五感による生態学」「川の話をしながら」「川のHの条件 陸水生態学からの提言」ほか著書多数。


●目 次

1章 色で診る/2章 味わう/3章 音を聞く/4章 匂いをかぐ/5章 触ってみる/感覚による生態学/おわりに


●読書のポイント

環境の評価や価値観を人間のもつ五感で表現しようというユニークな取り組みについてわかりやすく表現した本です。変わりゆく川の色を題材に、水の色から水質の良し悪しを判定したり、水環境の評価をそこに生息する生物(草、鳥、水生生物)の色で診ようというのが1章。以下、味わう(2章)、聞く(3章)、嗅ぐ(4章)、触る(5章)などの感覚で環境を評価しようと試みています。

いまから20年以上前に執筆された本で絶版になっているようですが、自然環境や生態系を身近な問題としてわかりやすく知ることができる本としてオススメします。夏休みなど自然に触れる機会が増えるとき、手元において読みすすめながら自然観察をすると考察に深みがでるのではないでしょうか。

それにしても、著者の森下先生の旺盛なフィールドワークぶりには驚くばかりです。日本はもとより世界中の湖沼・河川で調査・研究活動を繰り広げています。この本は、森下先生の研究活動の記録としても、また旅行記としてもとても興味深く読み進めることができます。

この本を読んで、この夏休みに自然観察に出かけることをオススメしたいですね。