中西 準子:水の環境戦略 岩波新書

水の環境戦略 (岩波新書)

水の環境戦略 (岩波新書)



●レビュー(「BOOK」データベースより)

生きるために必須の水。55億の人がこの地球上で生き、なおかつ環境を保全するためには、水とどうつきあえばよいのか。つねに現実を動かす政策論を展開してきた水問題の第一人者が、長年の成果を初めて集大成し、さらに新しい提言をおこなう。水の安全とは何か。途上国の開発をどう保証するか。市民と行政におくる熱いメッセージ。


●目 次

序章 水循環とは何か/第1章 世界と日本の水事情/第2章 排水による水質汚濁/第3章 新しい水道水質基準の見方/第4章 「リスク管理」の考え方/第5章 水環境―人間だけ安全ならいいのか


●読書のポイント

私は、この本を2002年7月に1度読みました。当時はまだ環境分野に足を踏み入れて間もない頃だったので、それほど印象に残る本ではなかったのです。今回、改めて読み返してみると・・・これは実に奥の深い本です。環境分野に係わる人だけでなく、多くの一般読者に読んで欲しい本だと思います。かなり専門的な記述も多く、全くの素人の方には少々とっつきにくい箇所もありますが、そいうった部分を読み飛ばしても環境問題との取り組み方やリスク管理の考え方など、得るものは大きいと思います。特に4章の「リスク管理」の考え方は、読み応えがあります。

「職業病」と「公害問題」そして環境問題の関係や、環境リスクとベネフィットの関係など、現在大きな問題となっているアスベストの問題を考える上でも大変参考になります。また、本のタイトルを見ると「水」という限られたテーマについてのみ言及されていると思われるかもしれませんが、環境問題に広く共通する話として興味深く読み進めることができるでしょう。理詰めでしかも歯に衣着せぬ物言いには強い説得力があります。人によっては敬遠する方もいるかもしれませんが・・・。