酒井 伸一:ゴミと化学物質 岩波新書

ゴミと化学物質 (岩波新書)

ゴミと化学物質 (岩波新書)



●レビュー(「BOOK」データベースより)

処分場が満杯、野積みされる産業廃棄物、焼却炉でのダイオキシン発生、環境ホルモン物質の拡散。いま日本は「ゴミ破局」ともいえる事態にある。しかし、一方で容器リサイクルや乾電池の非水銀化などの対策も進んでいる。ゴミに由来する有害化学物質の現状は。それらをコントロールする方策は。さらに社会システムはどうあるべきか。


●目 次
1 ゴミのゆくえ/2 有害性の考え方/3 燃焼過程のダイオキシン問題/4 環境ホルモンと残留性有機汚染物質/5 廃自動車とシュレッダーダスト/6 クリーン・サイクル・コントロール戦略


●読書のポイント

本書は、ゴミについてさまざまな角度からその問題点を浮き彫りにしようした労作です。

香川県の豊島でおきた廃棄物の投棄跡地問題、自動車の蓄電池のリサイクルからゴミ焼却飛灰に濃縮される鉛のライフサイクル、カセットボンベやスプレー缶による廃棄過程における爆発、阪神大震災にともなうゴミ問題からみた日本のマテリアルフローなど、現在の日本におけるゴミのゆくえをさまざまな視点から追っています。

また、有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約やゴミにかかわる有害化学物質の代表であるダイオキシンについて言及されています。さらに、このダイオキシンやPCBに代表される残留性有機汚染物質(POPS)や環境ホルモン(外因性内分泌撹乱物質)についても解説されています。あるいは、自動車廃棄物の問題の所在と対処方法や約10万種類にのぼる化学物質とのつきあい方についてもまとめられています。

循環型社会の推進と環境汚染拡散の防止というそれぞれの観点から化学物質に関する専門家として詳細に言及されている点が本書の特徴といえるでしょう。化学物質による汚染問題は、21世紀の大問題になるだろうとして、その基本的対処方法としてのクリーン・サイクル・コントロール戦略といったやや難解な考え方も示されています。

本書は、ゴミと化学物質のゆくえのスケッチを専門家の立場で描いたもの、といえるでしょう。なので、素人の立場からみると本書はかなりとっつきにくい書ということになってしまうかもしれません。あえて、それにチャレンジしてみるのも一興だと思いますが・・・