森住 明弘:環境とつきあう50話 岩波ジュニア新書 (501)

環境とつきあう50話 (岩波ジュニア新書)

環境とつきあう50話 (岩波ジュニア新書)



●レビュー

保存食品なのに賞味期間が表示された、ペットボトル入りの醤油。キュウリはトレイにのってラップがかかっているまっすぐな「A級品」。食べ物になぜこんな「添え物」がついているのだろう? 牛乳パックはどこから来てどこへ行くのだろう? 身近なものとつきあうと、環境問題の構造がくっきりと浮かび上がってくる。


●目 次
みそ汁/自然農法/黒い米粒/キュウリ/バナナ/タコ・アワビ/おひたしと歯並び/賞味期間/割りばし/牛乳パックと私/牛乳パックをつくる/牛乳パックを回収する/びん/空き缶/ラップ/トレイ/てんぷら油/堆肥/食品残渣/メタン発酵/雨水/蛇口と森林/飲み水/家庭排水/下水処理場/浄水槽をつくる/井戸水/合成洗剤と石けん/手づくり石けん/シャンプー/制汗剤と除菌スプレー/不快害虫/ばい菌/エイズ/トイレットペーパーと私/トイレットペーパーをつくる/トイレットペーパーを売る/電気/貯金/衣服/お葬式/ごみステーション/集団回収/こいのぼりと煙突/公園/小川/星空/ごみ埋立地/街づくり・ふるさとづくり/比叡山から嵐山へ



●読書のポイント
今回は、岩波ジュニア新書からの「環境」モノの本の紹介です。ジュニア向けということで、読者のターゲットは中高校生向けという感じでしょうか? でも、内容を読むとかなり専門的な話も出ていて、それほどとっつき易い本ではありません。もっともっとかみ砕いていただき、小学生でも読めるような本に仕上げていただいてもよいのではないかと感じました。

さて、著者の森住明弘先生は、民際学の専門家。ものを起点とし、人を通じて環境問題をとらえるという視点はなかなか面白い。社会や自然のなかで自分を複眼的に見るというアプローチは、とても新鮮です。本書でも、みそ汁から話が始まり、自然農法、黒い米粒、そしてキュウリ、バナナへと続く話の展開は、まるで連句を読むような関連性で興味が広がっていきます。

自分の身の回りに環境について、さまざまな角度でのつきあい方を見直すいい契機となる本です。大人向けの本として、静かにモノトーンの世界で連句を読む。そんな感覚で読める本です。殺伐とした世の中で、環境問題を声高に訴えたヒステリックな本が多い中、こういう静かな口調の本もたまにはいいなあ、と思いました。