寄本 勝美:リサイクル社会への道 岩波新書

リサイクル社会への道 (岩波新書 新赤版 (857))

リサイクル社会への道 (岩波新書 新赤版 (857))



●レビュー(出版社/著者からの内容紹介)

ごみ問題は依然として,地球環境の持続や人類の生存を脅かす大きな障害となって立ちはだかっている.ごみを減量し,リサイクル社会を築くために,市民,企業,行政はどうすればよいのか,第一人者である著者が,豊富な事例やデータをもとに分かりやすく語る.ロングセラー『ごみとリサイクル』(1993年刊)の全面改訂版.


●目 次

第一章 危機への挑戦 / 1 ごみ問題の危機/2 シアトル市の挑戦/3 逆風を追い風に変えた名古屋市/4 問題の提起

第二章 最近のごみ・リサイクル事情 / 1 法と廃棄物/2 事業系ごみの増減/3 家庭系ごみの発生と排出

第三章 品目別に見たリサイクル / 1 古紙/2 容器包装/3 生ごみ/4 自動車/5 家電/6 パソコン/7 衣料品

第四章 リサイクル社会とはなにか / 1 持続可能な発展のビジョン/2 役割相乗型の社会システム/3 リサイクル社会の仕組み/4 循環基本法の特徴

第五章 リサイクル社会を築くために / 1 発想の転換/2 日野市の「ごみ改革」/3 再生資源の需要の拡大/4 再生資源の輸出の増大/5 産業と技術の構造改革

第六章 ごみ問題と市民、企業、そして行政 / 1 パートナーシップ論の台頭/2 ドイツとフランスのリサイクル政策/3 自治体の清掃財政/4 ごみ問題と住民意識/5 消費者意識の日独比較/6 ごみ問題と住民投票/7 企業の責任と対応/8 業界団体の役割/9 市民団体の政策提案

第七章 廃棄物ゼロ社会を求めて / 1 リサイクルの目的の歴史的変遷/2 リサイクル事業の将来像/3 環境と経済の両立

 参考文献/あとがき


●読後感想

レビューのように本書は、著者が1990年に執筆した「ごみとリサイクル」(岩波新書)の全面改定版です。前著も、ごみのリサイクルについていち早くその重要性を指摘した書として一読の価値があります。

それから、十数年の歳月を経て、本書が出版されたわけですが、その間の社会の変化には目を見張るものがあります。リサイクル関連の法律が整備される一方、消費者、企業、あるいは行政のリサイクルに対する取り組みや姿勢も随分と変わってきました。

「ごみとリサイクル」と「リサイクル社会への道」の2冊を読み比べることで、この十余年の変化を概観することができるでしょう。特に、第6章のパートナーシップ論の台頭という項の中で、市民、企業、そして行政という3者が、対立関係から協力関係に移行するという流れをみることができます。リサイクル事業では、この3者の役割分担と協働が大変重要であると指摘されています。

とはいえ、理想的なリサイクル社会を構築するには、まだまだ多くの課題が残されています。本書は、そうした問題を考えるうえでの手頃な教科書として利用する価値のある本だといえるでしょう。ただし、現場でリサイクルを推進する上で実際にネックとなっている問題について、鋭くメスを入れるような議論はほとんどなく、あくまでも教科書的な内容を網羅した無難な本と言うことができます。突っ込みの欲しい方には少々物足りない本かもしれません、