吉見 俊哉:万博幻想―戦後政治の呪縛 ちくま新書 (526)
- 作者: 吉見俊哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/03
- メディア: 新書
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●レビュー
高度経済成長の頂点を象徴する大阪万博から数え、2005年の愛知万博は日本で開催される五度目の万国博覧会である。その間、万博は一貫して、豊かさへの大衆的な欲望と国家の開発主義政策との癒着を可能にする仕掛け-----万博幻想----として機能してきた。
本書は、こうした「幻想」を広く長く作用させてきた「政治」の場としての万博の内実とその行く末を、国家と地方行政、財界、知識人そして大衆の間に繰り広げられるせめぎ合いに焦点を当てることで浮き彫りにする試みである。
●目 次
序章 戦後政治と万博幻想/第1章 成長のシンボルとしての万博----東京五輪から大阪万博へ/第2章 沖縄海洋博という分身----「本土復帰」と万博幻想/第3章 学園都市と科学万博----つくば科学博と幻想のほころび/第4章 愛知万博の転換の選択/終章 万博幻想と市民政治/参考文献/あとがき
●読後感想
本書では、大阪万博から、沖縄海洋博、つくば科学博、そして現在開催されている愛知万博が各章で取り上げられ、それぞれの時代背景と照らし合わせて、国家政策との符合点を浮き彫りにしています。
その中で著者は、戦後万博の源流を1940年に開かれる予定だった戦前の日本万国博覧会に求めています。この万博は、紀元2600年事業の一貫として、東西文化の融合というテーマの下で、実は日本精神を広め世界平和を達するという計画があったものだ見なします。そして、その流れを汲んだ万博がまさに大阪万博だったと。
その後の万博もその流れが続きますが、その転換の兆しが愛知万博でようやく見られるというのです。戦後万博の呪縛(これを万博幻想と呼んでいます)がここにきてようやく解けようとしているというのが著者の主張です。
日本の万博史ともいえる大作です。新書版としてはとても重たい読み物です。大筋ではこんな感じだと思うのですが、大型連休前半に拾い読みしていた中味をすっかり忘れてしまいました(謝)。