佐久間 充:山が消えた―残土・産廃戦争 岩波新書 新赤版 (789)

山が消えた―残土・産廃戦争 (岩波新書 新赤版 (789))

山が消えた―残土・産廃戦争 (岩波新書 新赤版 (789))



●レビュー

千葉県の中西部では、この40年間に約6億立方メートル、つまり12億トンの山砂を採取し、首都圏に供給してきた。その山砂で東京だけでも1300を越す高層ビルが建ち、東京湾の5分の1が埋め立てられた。・・・しかし、バブル景気が終わってみると、この地方からは山がいくつも消えていた。そして何千ヘクタールという更地や断崖がいたるところに放置されたが、やがてそこへ首都圏からの膨大な量の残土や産廃が運び込まれ、そこからは有害な物質が検出されている。

すさまじい現地の状況をダンプ運転手や住民たちへのきめ細かな取材を交えて報告する。


●目 次

はじめに/Ⅰ 経済発展の陰で/Ⅱ 「開発」が環境にオもたらしたもの/Ⅲ 残土・産廃戦争/Ⅳ 人々の暮らしはどう変わったか/Ⅴ 今後に向けて/あとがき


●読後感想

40年で6億立方メートルという数字にピンとこない方も多いかも知れません。野球のドーム球場の容積が約150万立方メートルですから、ドーム400個分の土を40年で山から削り出したということになります。毎年、ドーム10個分の山が削られた、というとその規模の大きさが実感できるのではないでしょうか。

この本の価値は豊富な情報(データ)と写真にあると言えるでしょう。残土や産廃の不法投棄の話は新聞記事などで見聞きすることはあるが、イマイチ身近な問題としてはピンとこない、という話を聞きます。

でも、この本に示された木更津市の住宅裏の「平成新山」(図3−1)の写真を見たら、他人事とは思えなくなります。もし、自分の住んでいる家で同じことが起きてしまったら・・・そんなことを考えたらぞっとしますよね。

ただ、本書は残土や産廃の問題をヒステリックに訴えるというトーンの書ではありません。あくまでも取材と客観的なデータに基づくルポルタージュです。一方的な見解を羅列するということもないので、かえってデータや記事に信憑性の高さを感じます。

日ごろ、建設現場などで土を日常的に扱っている方には、是非読んで欲しい1冊です。そして、これまでの建設事業が今後どのように変化していくのか、考えていただく契機となれば幸いです。

http://www.domi-es.jp/