立花 隆:エコロジー的思考のすすめ―思考の技術 中公文庫

ISBN:4122017645



●レビュー(「BOOK」データベースより)

いまや環境問題はサミットの議題となるほど深刻化しているが、状況の悪化を防ぐには泥縄式の対策を積み重ねるのではなく、本当に文明のベクトルを変えねばならない。そのためにはエコロジカルな思考が万人の常識となる必要があるのだ。


●目 次

プロローグ 思考法としてのエコロジー/1 人類の危機とエコロジー(エコロジーの登場、閉ざされた地球―エコシステム、生命と環境、文明と自然は調和しうるか?)/2 エコロジーは何を教えるか(システムのエコロジー、適応のエコロジー、倫理のエコロジー、生存のエコロジー)/エピローグ―自然を恐れよ


●読後感想:エコロジカルな発想
 
風が吹けば桶屋が儲かる」という話をご存じですか。これは十返舎一九東海道中膝栗毛に出てくる話だそうです。

風が吹く→砂埃にやられて盲人が増える→三味線の流しが繁盛する→三味線の胴の猫の皮の需要が増える→猫狩りで猫は激減→鼠の天下→鼠が箱をかじる→桶屋が儲かるという話です。この考え方は生態学的(エコロジカルな)思考そのものだ、というのです。

地球温暖化問題や酸性雨の問題、あるいはダイオキシンの発生や環境ホルモンの問題は、いずれもこうした生態学的考察が重要だということです。環境問題の全体像がまだまだ明確になっていないのが現状です。そしてこうした群盲象を撫でるような状態だからこそ、エコロジカルな発想とその検証が重要になるのではないでしょうか。逆説的な話に聞こえるかもしれませんが、アプローチの方法としては正しいと思います。