志村史夫:「水」をかじる ちくま新書

「水」をかじる (ちくま新書)

「水」をかじる (ちくま新書)



●レビュー内容(「BOOK」データベースより)
水道水のまずさをなげく人が多い一方で、飲み水とトイレの水に同じ水を使っている不思議な国、ニッポン。身近すぎて見落としがちだけれど、そろそろ「水」にちゃんと向き合ってみては?何より、からだの六〇パーセントが水分で、一日に二・五リットルもの水を摂取する人間の健康にとって、どんな水を飲んでいるかはきわめて重要であり、「水」を知らずに生きることは、実はとても怖い!身近でありながら奥深い「水」を知るための、現代人必読の書


●目 次

第1章 人体内の水 / 第2章 地球、生物と水 / 第3章 水とは何か / 第4章 水の性質 / 第5章 生活の中の水 / 第6章 さまざまな水


●読書のポイント

「水」をかじる――なかなかいいタイトルだと思いませんか? 本書は半導体結晶工学の研究者が書いた「水」の本です。さまざまな物質を研究の対象とする中で、「水」の不可思議さを知り、究極的に「水」に惚れ込んでしまったという経緯に興味が惹かれました。

物質としての興味深さだけでなく、哲学や文学、あるいは宗教にまで踏み込んで「水」の存在を多角的にとらえようとする著者の姿勢に好感を持ちました。特に、各章の終わりの部分で紹介されている「文学作品にみる水」のコラムは、閑話休題の読み物としてキラリと光ります。

あとがきで著者は次のように述べています。

何だか、さんざん世界の「グルメ料理」を食べ尽くした後に行き着いたのが茶漬飯であるようで、また、たくさんの複雑な楽器やオーケストラを楽しんだ後に行き着いた楽器があの素朴なオカリナであり、オカリナの音色であるようで、とても面白い。何事も、何ものも、結局は“Simple is the best.”ということなのだろうか。

「水」にすっかり惚れ込んだ境地が、見事に言い表わされていると思いました。また、「『水』をかじる」というタイトルで感じられるように、身近な「水」について改めて考えるヒントがいくつも隠されている本としてオススメします。ただ、本気で「水」をかじろうとしても、生かじりはできませんので、悪しからず(笑)