池田 清彦:環境問題のウソ ちくまプリマー新書

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)

環境問題のウソ (ちくまプリマー新書)



●レビュー内容(「MARC」データベースより)
地球温暖化ダイオキシン外来種…。マスコミが大騒ぎする環境問題を冷静にさぐってみると、ウソやデタラメが隠れている。科学的見地からその構造を暴き、「正論」を斬る。京都議定書を守るニッポンはバカである!


●目 次

第1章 地球温暖化問題のウソとホント(地球温暖化は本当なのか、温暖化は昔もあった ほか) / 第2章 ダイオキシン問題のウソとホント(ダイオキシンは危険なのか、ゴミ焼却とダイオキシン ほか) / 第3章 外来種問題のウソとホント(外来種悪玉論のいかがわしさ、日本の中の外来種 ほか) / 第4章 自然保護のウソとホント(自然保護はなぜ必要か、圏央道と昆虫採集禁止 ほか)



●読書のポイント

環境問題のウソ:京都議定書を守るニッポンはバカである! 科学的見地から「正論」を斬る(帯)――このタイトルにつられて思わず手にした本です。生物学者の著者が、地球温暖化ダイオキシン外来種、自然保護の4つの環境問題を取り上げ、世間でよくいわれていることは全てウソであると喝破したトンデモ本です。

これらの問題は、すべて科学的には疑問点があり、それぞれの利権にからんでいる輩が儲けているだけではないか、ということがおちゃらタッチで描かれています。内容の真意はともかく、ここに取り上げられた4つの問題がすべて陰謀やデタラメで成り立っているといううがった見方には同意できません。

どう考えても地球温暖化なんて大した問題じゃない。大変だ大変だと騒いでお金が儲かる人ならばともかく、そうでない僕は、他人の金儲けを助けるために、快適な生活を犠牲にしたりよけいに税金をとられるのは勘弁してもらいたいと思う。そこまでお人好しの人は普通の日本語ではバカって言うんだよね。(本文第一章より引用)

「自然を大切に」とか「地球にやさしくしよう」とかの口当たりのいい標語が流行り出して久しいが、地球にやさしくしなくても。自然を大切にしなくても、地球や自然は別に困らない。(本分第四章より引用)

終始このようなスタンスで本が構成されていて、正直、「品位に欠ける本だな」と思いました。ちくまプリマー新書は、従来の「新書」よりも若い読者層にターゲットを絞って書かれているといいます。もしそうだとしたら、こうした主張を一方的に押し付けることに憤りさえ感じます。果たして、若い人がこの本を鵜呑みにするかどうかわかりませんが、私のようなオヤジには反感を買う本であることは間違いありません。

地球温暖化二酸化炭素の排出量の増加が原因なのか?
また、そもそも現実に地球は温暖化しているのか?

ダイオキシンは本当に危険なのか?
高性能焼却炉は必要か?

ブラックバスは悪者か?
それを駆除するために莫大な税金を投入したり、
日本固有亜種を法律で採取することを禁止する必要があるのか?

そもそも自然保護は必要なのか?
・・・

こうした疑問点を持つこと自体は、決して悪いことではありません。私自身も同じような疑問をもっています。ただ、環境問題にはさまざまな要因が複雑に絡み合っていて、それぞれの要因を独立させ、その優先順位を見極めることが極めて難しいと思うのです。そのため、明快な筋道で一方的な結論を導くことができません。こうした問題は長い年月の中で評価されていくのではないでしょうか。少なくとも、一方的な陰謀論の押し付けには断固として「NO!」と言いたい。そんなことを感じた本です。