松井 孝典:松井教授の東大駒場講義録―地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る 集英社新書



●レビュー内容(「BOOK」データベースより)

惑星科学の第一人者としてのみならず、自然科学、人文社会科学等の領域を超えて、二一世紀の新しい智の体系の必要性を説く東大大学院の松井教授が、十数年ぶりに東大駒場での一般教養の講義に登場。最近の東大生のレベル低下に歯止めをかけるべく、最新の科学情報と知的刺激に満ちた講義を一一回にわたり行った。本書はその講義を再構成し、高校生レベルの物理や科学の常識で、誰にでも読みこなせる「一般教養書」を目指した。惑星科学の最先端に興味のある人も、環境問題に興味のある人も、目からうろこの一冊である。


●目 次

1時間目 地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る―ガイダンスを兼ねて / 2時間目 地球環境の成り立ちと変遷 / 3時間目 文明とは何か―地球システム論的文明論 / 4時間目 生命の普遍性を宇宙に探る―アストロバイオロジーについて / 5時間目 太陽系とは?―比較惑星学的見地から / 6時間目 もう一つの地球はあるか―地球とはどんな星か / 7時間目 太陽系起源論 / 8時間目 系外惑星系 / 9時間目 地球の起源 / 10時間目 天体衝突と地球の進化1 / 11時間目 天体衝突と地球の進化2―そして地球、文明の未来


●読書のポイント

なんだか二十数年前にタイムスリップ――学生時代に戻ったような感覚で本書を読み進むことができました。大学の一般教養過程でこんな講義がなされているのであれば、もう一度大学でしっかり勉強するのも悪くはないな、なんて思いながら読み進めることができました。

最新の地球物理学の話や環境問題の話など、とても広範囲にわたるテーマについて語られています。その内容のひとつひとつが知的好奇心をそそるものばかりです。

人類の現代文明の歴史から種としての人類の起源、地球・太陽系の形成、宇宙の起源まで壮大な規模で文系・理系といった既存の学問の枠を超え、壮大なスケールで語られています。

ひとつひとつのテーマをきちんと理解しようとすれば、それなりの知識や教養も必要ですが、ざっと読み流しても全体像をとらえることができる秀逸の本です。

この手の本には目がない私にとって、久しぶりに夢想しながら知的好奇心を刺激してくれた本です。

 地球がどのようにしてできたのか?
 月は? 他の惑星は? そして宇宙は?

なんて感じで、「科学する心」に火を灯してくれます。

こんな壮大なスケールで世界を見渡すとき、私たちがあまりにちっぽけな存在に見えてしまいます。そのちっぽけな存在が環境問題を引き起こしているという現実をこれまでとは違った感覚でとらえることができました。