吉田 文和:循環型社会 中公新書

循環型社会 (中公新書)

循環型社会 (中公新書)



●レビュー

近年、「循環型社会」をめざしゴミ減量化とリサイクル推進の取り組みが始まっているが、そのどちらもあまり成果があがっていないのが現状である。自治体・業者・市民それぞれに手間と費用が増え、不法投棄や海外への有害廃棄物の輸出など、弊害もあらわれている。本書では、容器包装、家電、自動車などのリサイクル制度を再検討し、環境への負荷を下げながら豊かな生活を実現するという困難な課題の解決策を考える。


●目 次

序章 循環型社会とは/第1章 物質循環と制度・参画者分析/第2章 循環型社会の基本問題/第3章 容器包装リサイクル/第4章 家電リサイクル/第5章 自動車リサイクル/第6章 建設リサイクルと食品リサイクル/第7章 不法投棄はなくせるか/終章 生活を豊かにし、環境負荷を少なくする道


●読後感想

21世紀に入り、「持続可能な社会」や「循環型社会」という考え方が着実に根づき始めています。それは2000年に「循環型社会形成推進基本法」が成立し、その基本法のもとに個別のリサイクル法が次々と制定・実施されるようになったことがひとつの契機になっています。一方、現実に廃棄物が削減され、リサイクルが進んでいるかという視点からみると、不法投棄や海外への流出など解決すべき課題も多くあります。このような問題に対して本書では「物質循環」と「制度・参画者分析」を鍵として読み解こうという試みがなされています。

まず、「物質循環」を地球規模で概観することにより、地球環境問題との関連づけて考察されています。各論では、「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」「自動車リサイクル法」「建設リサイクル法」「食品リサイクル法」が取り上げられます。そして、「不法投棄はなくせるか」という問題について、日本最大の不法投棄事件(青森・岩手県境事案)が紹介され、排出者の責任徹底、廃棄物税の役割、行政・事業者・市民の各参画者の役割分担と協力について解説されています。終章では、今後の方向性について、「生活を豊かにし、環境負荷を少なくする道」として、持続可能な社会、ものと機能、生活の豊かさと環境負荷について、言及しています。

第一線で活躍されている環境経済学者の本ということもあり、かなり読み応えのある内容となっています。循環型社会に関する、とりわけ法制度面の解説が広範にわたっているのが本書の特徴と言えるでしょう。一般の方にわかりやすく書いたとしていますが、なかなかすんなりと受け付けてはくれないでしょう。どちらかというと、入門書というよりは、専門書といった方がいい内容です。だた、索引や注も豊富で、きちんと読むとそれなりに理解は深まると思います。

建設系のリサイクルに興味のある方は、第6章、第7章だけでも一読の価値はあります。石渡正佳氏の産廃コネクションとの併読をオススメします。


http://www.domi-es.jp/