三橋 規宏:環境再生と日本経済―市民・企業・自治体の挑戦 岩波新書 新赤版 (924)



●レビュー

環境と経済の両立目指す新しい実験

地球の限界があらわになった今世紀の日本は、政府の政策づくり、地域おこし、企業活動、市民生活などのあらゆる分野で、環境保全、破壊された自然の再生、省エネ、省資源、環境負荷の低減などに積極的に取り組み、持続可能な経済社会を構築していかなければなりません。すでに環境と経済の両立を目指す新しい実験が日本列島のあちこちで生まれています。21世紀の主役である地域社会、環境経営に意欲的に取り組む企業、地球益を行動原理に置く環境NGO、NPOがゆるやかなコラボレーションを組むことで日本は変わってきました。日本経済を環境再生というキーワードで紡ぎ直すルポを通して、明日の日本社会の最新の姿を描いてみました。



●目次

序/第1章 自然環境の復元に挑む/第2章 地域価値の発掘者たち/第3章 新しいビジネスモデルの構築/第4章 ストックを大切に使う――サービス重視の経済へ/第5章 環境立国へ向けて――循環型社会への道/あとがき


●読後感想

本の前半では、さまざまな地域での環境改善にかかわる取り組みが紹介されています。環境と経済の両立を目指して、新しい社会づくりへの挑戦が日本の各地で行われています。これまでの画一的なプロジェクトとは、一味も二味も異なる取り組みです。

副題に、「市民・企業・自治体の挑戦」とあるように、循環型社会の構築を目指して、企業、自治体、そして環境NGO、NPOの草の根の活動とのゆるやかなコラボレーションによってプロジェクトが運営されている点は注目に値します。

この草の根活動が、地域ぐるみの環境再生事業を展開していくうえで大きな役割を果しています。特に、キーパーソンとなる人物が必ずいて、プロジェクトの成否に強い影響を与えていることが良くわかります。言い出しっぺの熱意が、プロジェクト推進の原動力となっているということでしょう。

後半部分では、「環境と経営の両立」で利益を上げている企業の事例が紹介されています。

環境税導入の見送りなど、経済界ではまだまだ環境と経済の両立が難しいという認識が強いようですが、こうした事例をひとりでも多くの人に知っていただき、ビジネスの中に「環境」を積極的に取り込んでほしいと思います。

この本を読んでいると、環境ビジネスのヒントが随所に隠されている気がします。新しいビジネスモデルのアイディアが次々に生まれてきます。本書は非常に有益な情報が多く掲載されています。
http://www.domi-es.jp/